■草木染を始めたきっかけを教えてください。
→草木染めとの出会いは、美大在学中に長男を出産した頃だったと思います。
食を中心に、自分が選ぶものが変わっていく中で自然と巡り合ったのが草木染め。
植物で色が染まるという事実にただただ感動して、その後の課題にしても制作にしても、「これをつくりたい」より「この色でなにをつくろう」という気持ちの方が強かった。
それは今も、ものを作るときの出発点です。
■今回のヒノキ染について材料や工程、技術の説明をお願いします。
→このヒノキ染めは、7年前に思い描いた夢の第一歩なんです。
製材時に不要となる樹皮で色を染めること、その色で製品を作ること、その流れを継続するための仕組みづくり。
ようやく商品にも展開できる色のレシピができました。
染色工程についてはほぼ独学なので、これが正しいとは言えませんが、つくるものや染色材料に合わせて、日々実験を繰り返しています。
ヒノキ染めでは、チップ状の樹皮を、重曹を入れたアルカリ性の水で煮出して染液を作ります。
定着と発色のために、植物の色素を金属イオンと反応させる媒染という工程では、アルミと鉄を使っています。スモークピンクがアルミ、ローズグレーが鉄で媒染処理をしたものです。
染めと媒染を何度か繰り返して、色を重ねていきます。
■仕事の中で大切にしていることがあれば教えてください。
→植物から染める色が好きで、その工程が楽しくて始めた草木染めですが、それを仕事にしたことで、自分以外の人にも植物の色を楽しんでもらえることが幸せです。
環境のこと、健康のこと、地域のこと、エネルギーのこと。ものを作る上で考えなければならないことはたくさんあります。
ただ、私が植物で色を染めることも、無農薬栽培されたオーガニックコットンを使うことも、村の資源を循環させることも、ごくごく個人的な趣味嗜好であることは、お客様にもよくお伝えしています。
私自身が自然の一部でありたいと願い、綿花を栽培する人や土地が病気になることを望まず、村の中で仕事がまわることを面白がっているだけであって、大それた使命を掲げるんじゃないよ。
と、日々自分に言い聞かせて、これからも「この色でなにをつくろう」という気持ちを大切に、仕事をしていきたいと思っています。